アマゾンプライム会費払い戻しへ。人々の生活全般を守るオーストリアの労働組合

森羅日記 労働組合

こんにちは、小人です。

数日前、郵便受けから取ってきた郵便や広告を見てたら、一冊の冊子が入ってました。
労働組合の会報です。
読もうか捨てようかと表紙を見つめてたら、端っこの見出しが目に入りました。

「労働者組合の勝利、アマゾン譲歩」

それを見て小人は「ははあ、やっぱり来たか」と思いました。

人々の権利を守る欧州オーストリアの労働組合


が今回のテーマです。


アマゾン・プライム会費、値上げ率は40%

アマゾンプライムの会費値上げ、日本でもありましたね。

オーストリアでは昨年2018年2月に値上がりしていて、49ユーロから69ユーロになりました。差額20ユーロは日本円で2500円ほどで40%の値上がりです。
アマゾンでそのお知らせを見た時、ちょっと驚きました。

インフレを大幅に超える値上げは制限されてなかったっけ?
家賃や食品ではないからOKなのかな。

アマゾンプライムに需要が無いので、小人はそのまま忘れていました。

労働組合、アマゾンを提訴


思い出したのは労働組合の会報を見た時です。
小人は忘れても、労働組合は黙ってなかったようです。

労働組合会報労働組合はアマゾンを利用規約の条項12箇所が法にそぐわないとして提訴。値上げに同意する条項が利用規約に含まれてなかったようです。
商事裁判所と高等裁判所両所から勝訴判決が下り、値上げ分の払い戻しが決まりましたが、アマゾンは「サービスの内容を大幅に増やしたので値上げは合法であり、更に3ヶ月の準備期間を更に5ヶ月延期し、同意しない場合はいつでも退会できるようにしていた」という理由で払い戻しを拒否。
「アマゾンがオーストリアの法を無視するのは許せない。判決は外国の企業でも従うべきであり、我々は断固としてオーストリアの消費者を守る」と労働組合が再度裁判に持ち込み、再勝利を収めたそうです。

値上げ率は問題なかったようですが、別の理由で払い戻しが確定できたんですね。

(払い戻しは2017年と2018年分に限られ、申請期間は2019年6月30日が締め切り。2019年に改めて値上がりしますが、今度は同意か退会かを選択する事になります。)

この他にも
1)2014年7月21日前に購入されたギフト券の有効期間3年間を10年に延長。(オーストリアではギフト券に記載された有効期限が切れていても受取拒否が出来ない法があります。)
2)買い物の代金を口座から振り込む際の請求書作成の費用1.51EURの払い戻し
の2条項がこの裁判で決められました。




市民の生活全般を守るオーストリアの労働組合


労働組合がアマゾンプライムとどう関係あるのか?
一寸疑問ですよね。

オーストリアの労働組合は労働者が作るものではなく、労働者の権利を守るための行政機関。そして労働法に関してだけでなく、働きやすさと暮らしやすさを向上し、安心できる生活が送れるように生活全般において積極的にサポートしてくれる機関で、消費者保護機関としても活動しているのです。

アマゾンのような大企業、国が大株主として絡んでいるテレコム、銀行。
正体が掴みにくい悪徳商法。
個人が向かい合うには大きすぎる相手や不透明な相手にも消費者の立場に立って動いてくれます。

隔月で送られてくる会報にはこれらの事例や情報が満載で、目を通しておくと余計なトラブルを防げたり、生活に関わりの深い分野の法律の知識が養えます。

生活基盤に関する情報や節約のためのアドバイスも。

📎住居賃貸法
📎光熱費、銀行手数料、携帯電話やインターネット料金比較
📎ホリデー旅行手配とトラブル時の権利
📎各種サービスや商品の比較と品質検査

知らないところで奮闘してくれるだけでなく、トラブルや疑問を相談出来る窓口もあり、これがまたとても親切。それぞれの法律に詳しい専門スタッフがきちんと話を聞いて適切なアドバイスをしてくれ、必要ならば交渉を代行してくれるばかりか、法廷まで一緒に歩み出てくれるなど、個人が権利を主張するのに信頼の置ける心強い味方です。


企業には鬼も震える怖ーい存在!

企業にとっては労働組合は何よりも怖い存在かも知れません。

オーストリアの労働法は労働者保護優先型。
勤務時間、休み時間、時間外労働、勤務インターバルから傷病欠勤、育児休暇など、労働者の権利として細かく定められ、会社側の都合で決められる事はほとんどありません。
シーズンや時間帯によって必要なスタッフ数が大幅に違う業界などは、法律に沿った勤務表作成だけでも頭が痛いほどです。

細かな例外はあるとしても、被用者全てが同じ条件であることが原則。
正社員とパートといった分け方もなく、期間限定採用の上限は6ヶ月。契約労働は大きく制限され、「日雇い労働」も連続するなら短時間労働者として雇用しなくてはならず、派遣の場合も派遣会社が雇用主として労働法に対する責任を負います。


双頭の龍?労働組合に密に並ぶ社会保険局



ここまで「正規雇用」を徹底してる理由は社会保険でしょう。

人口が少ないのに社会的なお国柄。
当然保険料も高くなりますから企業が節約したいのも道理ですが、それでは機能しません。
高い社会保険料を含んだ人件費を節約するための雇用形態が横行しないように、社会保険局も目を光らせています。

月給が446.81*ユーロ(2019年度)を超えれば、雇用期間関係なく社会保険加入義務がつき、会社が州の社会保険局に登録します。(*最低賃金で週12時間程度)
健康保険(介護保険を一部含む)、労災保険、年金保険、雇用保険全てが含まれており、基本的な保険はこれだけです。高収入の人は個人で追加の保険に加入したりします。

つまり、週に12時間程度以上働く労働者全てがこの社会保険の対象な訳で、これに該当する人は自動的に全て労働組合の会員になります。
入会手続きも無ければ会費もなく、知らない間に会員になっています。

払われるべき賃金と払われるべき手当全て含めた額に対して社会保険料が設定されるだけに、法律の定めた条件が確実に実行されることが社会保険料の確保に繋がる訳です。
労働者本人達、労働組合、社会保険局、この3方から企業の正しい扱いを監視してる事になりますね。

「労働組合に相談する」「労働組合の話では」
この言葉が出れば、それだけで企業は震え上がり、問題が片付くこともしばしば。労働組合に駈け込まれれば、社会保険局に筒抜けで、ペナルティは軽くありません。

労働者の権利を守るだけでなく働きやすい社会を作るために、幅広い活動をしています。

📌地方からの通勤に便利な交通機関の改善。
📌若者や高齢者、長期失業者の就職を助けるシステム作り。
📌仕事と育児の両立がしやすい保育制度作り。
📌労働者の権利を守るための啓蒙活動とトラブル時の相談、交渉代行。
📌スキルアップのための専門講座の支援。

ウィーン社会保険局
鬼も震える社会保険局…

終わりに


ツイッターで見てると、連日すごい長時間お勤めで、休日どころか食事もろくに摂る暇がないほどの方々がチラホラ目につきます。
それはブラック企業なのでは、と思っていたら、「裁量労働制「みなし労働時間制」というものが、れっきとした合法の労働制度としてあるんですってね。
産休や保育休暇を巡る会社の対応とのトラブルも目にしましたが、納得のいかない対処をされても、従業員の立場に立って間に立ってくれる機関があまりないように見受けました。

小人が日本で生活してたのは子供の時だけなので、日本の仕組みと現状を知らないのです。

オーストリアにも蛇の道はありますが、ワークライフバランスに注意し、人としての権利が守られるよう、しっかり管理されています。
もちろんそれは健康と精神衛生は人権であり、それがあってこその経済であるという思想の上でのこと。経済至上主義や資本主義と相容れない部分も大きいでしょう。

正直に言うと、働きながらの子育てのサポートや消費者を守る仕組み、そしてそれを国民にしっかり伝える試みに関しては、日本には少々頼りなさを感じます。
個人でそれらの改善に尽くす方々が多くいらっしゃるようですが、民間の努力に頼らず、もう少し国が気を配ってくれたらと思わざるを得ません。

どんな思想のどこの国であっても、人々が安心して安全に、人生を楽しむ余裕を忘れずに生きていけたら。
心からそう思います。

では!

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